
ミュージックコンソールの音に触れ抱いた感銘、それは僕の建築家としての原体験を呼び覚ました。
学生時代に初めて目にし衝撃を受けたサグラダ・ファミリア教会。人々はその威容にばかり目を向けるが、設計者ガウディの凄味は、弟子が遺した言葉に見て取れる。
「ガウディは教会を巨大な楽器と考えていた」。
光、彫刻、哲学、そして音楽。あらゆる美を集約した総合芸術としてのサグラダ・ファミリアをガウディは目指した。なかでも音楽については、キリストの声を教会の内外に響かせるために、もっとも合理的な音響空間を創出してみせたのだ。
このミュージックコンソールには、音響技術者の空間へのこだわりが込められている。まさにガウディにも通ずる精緻な設計思想と音楽に対する優れた感性がなせる技だ。
ガウディと同郷のチェリスト、パブロ・カザルスの演奏をこのミュージックコンソールで楽しむのが、僕の至福の時。
毎夜、想いはバルセロナへと馳せる。

サグラダ・ファミリア教会
スペイン、バルセロナに建設中の教会。サグラダ・ファミリアとは「聖家族」を意味する。正式名称はExpiatori de la Sagrada Família(聖家族贖罪教会)。 スペインを代表する建築家アントニ・ガウディの代表作の1つ。
建築家 1951年神戸生まれ。株式会社アルクデザイン一級建築士事務所代表。
1984~1985年、バルセロナ カテドラガウディ研究所に従事。
我国におけるガウディ建築研究者の一人。
電話番号:03-5456-1251